「事業をやめることにしたが、会社をどうすればいいのか分からない」というご相談は、経営者の高齢化や後継者不在を背景に増えています。会社を畳む方法には、大きく分けて「休眠」と「解散・清算」の2つがあり、どちらを選ぶかによって、その後の手続きや負担が大きく変わってきます。
今回は、この2つの違いと、どちらを選ぶべきかの考え方を解説します。
休眠とは
休眠とは、法人格(会社そのもの)は残したまま、事業活動を停止することです。法律上の正式な手続きというよりは、実務上の状態を指す言葉で、主に次のような対応をとります。
- 税務署・都道府県・市区町村に「異動届出書(休業の届出)」を提出する
- 事業活動を停止し、売上を発生させない
休眠にしても、会社そのものが消滅するわけではないため、登記簿上の会社は存続したままになります。役員の任期が満了すれば、通常どおり役員変更登記(重任登記)も必要ですし、法人住民税の均等割(自治体によっては減免制度がある場合もあります)も原則として発生し続けます。
解散・清算とは
解散・清算は、会社を法律上消滅させるための正式な手続きです。大きく分けて次のステップで進みます。
- 株主総会で解散を決議し、清算人を選任する
- 解散登記・清算人選任登記を申請する
- 官報に解散公告を掲載し、債権者に対して一定期間(2ヶ月以上)申し出るよう催告する
- 会社の財産を清算(債権の回収、債務の弁済など)する
- 株主総会で清算結了を承認する
- 清算結了登記を申請する
解散から清算結了までは、官報公告の期間(最低2ヶ後間)があるため、最短でも2〜3ヶ月程度かかるのが一般的です。
「休眠」を選ぶメリットとデメリット
メリット
- 解散・清算のような複雑な手続きが不要で、比較的手軽に始められる
- 官報公告や清算手続きにかかる費用を抑えられる
- 将来、事業を再開する可能性がある場合、会社の形をそのまま残しておける
デメリット
- 登記簿上は会社が存続し続けるため、役員の任期満了のたびに変更登記(重任登記)が必要になる
- 法人住民税の均等割など、一定の税負担が継続する場合がある
- 最後の登記から12年間登記をしないままだと、法務大臣による公告等を経て「みなし解散」の対象となり、法務局の職権で強制的に解散したものとみなされてしまう
- 完全に会社をなくしたいと考えている場合、根本的な解決にはならない
「解散・清算」を選ぶメリットとデメリット
メリット
- 会社を法律上消滅させることができ、その後の登記や税務申告の義務から解放される
- 債務関係などを清算のうえで整理できるため、将来のトラブルを残しにくい
- 経営者自身の代で、会社の後始末を明確につけられる
デメリット
- 解散登記、清算結了登記など、複数回の登記が必要で、その都度費用がかかる
- 官報公告の期間があるため、一定の時間がかかる
- 財産や負債の状況によっては、清算手続きが複雑になることがある(債務超過の場合は特別清算や破産手続きが必要になることも)
どちらを選ぶべきか、判断のポイント
将来、事業を再開する可能性があるか
「今は事業を止めるが、数年後にまた同じ形で再開したい」という明確な見通しがある場合は、休眠という選択肢も検討の余地があります。ただし、休眠中も役員変更登記などの義務は残る点は理解しておく必要があります。
完全に会社を消滅させたいか
「もう二度と事業を行うつもりはない」「税務申告や登記の手間から解放されたい」という場合は、解散・清算まで進めるのが根本的な解決になります。
財産・負債の状況はどうか
会社に大きな負債がある場合、通常の解散・清算では対応できず、特別清算や破産といった別の手続きが必要になることがあります。まずは会社の財産状況を正確に把握することが、どの手続きを選ぶべきかの判断材料になります。
「とりあえず休眠」を選んだ場合の注意点
明確な再開の見通しがないまま「とりあえず面倒だから休眠にしておこう」という選択をすると、結果的に前述の「みなし解散」の対象になるまで、何年も中途半端な状態が続いてしまうことがあります。みなし解散になった場合、その後に会社を正式にたたむには、解散の登記に加えて清算人選任の登記なども必要になり、かえって手間が増えることもあります。
手続きにかかる費用の目安
解散・清算には、解散登記・清算人選任登記・清算結了登記のそれぞれに登録免許税がかかるほか、官報公告の掲載料も必要です。休眠に比べると初期費用はかかりますが、その後の維持費用(税負担や登記の手間)がかからなくなる分、長期的に見れば負担が軽くなるケースも少なくありません。
まとめ
- 休眠は法人格を残したまま事業を停止する方法で、手軽だが登記義務や税負担は残る
- 解散・清算は会社を正式に消滅させる方法で、手間と費用はかかるが根本的な解決になる
- 12年間登記をしないと、みなし解散の対象になるリスクがある
- 将来の再開見込み、財産・負債の状況を踏まえて、どちらを選ぶか判断することが大切


