結論:家族信託は、「相談・ヒアリング」→「家族会議」→「契約内容の設計」→「公正証書の作成」→「財産の移転・登記」→「信託の開始」という流れで進みます。相談を始めてから信託がスタートするまで、一般的には1〜3ヶ月程度かかります
以下、実際の相談事例に沿って、各ステップで具体的に何を行うのかを解説します。
相談事例:認知症の母を心配する娘からの相談
ご相談者:長女(50歳)
「母(80歳)は一人暮らしで、まだ判断能力はしっかりしていますが、最近物忘れが増え、そろそろ何か対策をしないといけないと考えています。家族信託について調べてみたものの、実際にどのような手順で進むのか、何から始めればいいのか分からず、相談だけでもしてみたいと思っています。」
このような「まず何をすればいいのか分からない」というご相談は非常に多くいただきます。以下、標準的な流れに沿って解説します。
ステップ1:専門家への相談・ヒアリング(目安:1回目の面談)
まずは、司法書士などの専門家に相談し、現在の財産状況や、何を実現したいかをヒアリングします。この事例であれば、
- 母の財産の内容(自宅、預貯金など)
- 誰を受託者にしたいか(長女自身か、他のきょうだいか)
- どのような不安があるか(判断能力低下後の生活費の管理、自宅の売却可能性など)
といった点を整理していきます。この段階では、まだ契約内容を確定させる必要はなく、率直な不安や希望を伝えることが大切です。
ステップ2:家族会議・家族間の合意形成(目安:2〜4週間)
家族信託は、委託者(この事例では母)と受託者(たとえば長女)だけで決めるものではなく、他の家族(きょうだいなど)の理解を得ておくことも重要です。
この事例で長女以外にもきょうだいがいる場合、「なぜ長女が受託者になるのか」「他のきょうだいの相続分にどう影響するのか」といった点について、あらかじめ話し合い、納得を得ておくことが、後々のトラブル防止につながります。専門家を交えた家族会議の場を設けることも一般的です。
ステップ3:信託契約の内容設計(目安:2〜4週間)
家族の合意が得られたら、専門家が具体的な契約内容を設計します。主に次のような項目を決めていきます。
- 信託する財産の範囲(自宅だけか、預貯金も含めるか)
- 受託者の権限の範囲(売却の可否、修繕の範囲など)
- 受益者の指定(母の生存中は母、死後は誰にするか)
- 信託の終了時期・終了後の財産の帰属先
- 受託者を監督する仕組み(信託監督人を置くかどうか)
この事例であれば、「母の判断能力が低下した後も、自宅の売却や生活費の管理を長女が行えるようにする」という目的に沿って、契約内容を具体化していきます。
ステップ4:公正証書の作成(目安:1〜2週間)
契約内容が固まったら、公証役場で公正証書を作成します。信託契約は、必ずしも公正証書にしなければならないわけではありませんが、契約の有効性を明確にし、後日の紛争を防ぐ観点から、公正証書で作成するのが一般的です。
公証役場での手続きには、委託者(母)と受託者(長女)双方の出席が必要です。事前に専門家が公証人と内容を調整し、当日はスムーズに進められるよう準備を行います。
ステップ5:財産の移転・信託登記、信託口口座の開設(目安:2〜4週間)
公正証書が完成したら、実際に財産を委託者から受託者に移転します。
- 不動産がある場合:信託を原因とする所有権移転登記と、信託の登記を法務局に申請します
- 金銭がある場合:信託財産专用の口座(信託口口座)を金融機関で開設し、信託する金銭をその口座に移します。信託口口座は、受託者自身の財産と明確に分別できる口座で、対応している金融機関に事前の確認が必要です
この事例では、自宅の信託登記と、生活費に充てる預貯金の信託口口座への移動が、この段階で行われます。
ステップ6:信託の開始・運用スタート
財産の移転が完了すると、いよいよ信託がスタートします。受託者(長女)は、契約内容に従って、信託財産の管理を開始します。母の判断能力が保たれている間は、母自身の意向を確認しながら、必要なサポートを行っていく形が一般的です。
ステップ7:継続的な管理・記録(信託期間中、継続)
信託が始まった後も、受託者には、信託財産と自分の財産を区別して管理する義務や、帳簿等を作成する義務が続きます。信託監督人を置いている場合は、定期的に管理状況を報告し、チェックを受けることになります。
この事例のように、母の判断能力が徐々に低下していく場合でも、あらかじめ決めた契約内容に沿って、長女が継続的に財産管理を行っていくことになります。
Q. 全体でどのくらいの期間がかかりますか?
A. ご家族の状況や財産の内容にもよりますが、相談開始から信託開始まで、おおよそ1〜3ヶ月程度が目安です。
家族間の話し合いに時間がかかる場合や、不動産が複数あり登記手続きが多い場合は、それ以上かかることもあります。逆に、財産がシンプルで、家族間の合意もスムーズな場合は、1ヶ月程度で完了することもあります。
この事例から分かる、家族信託を進めるうえでのポイント
- 最初の相談段階では、契約内容を決め切る必要はなく、不安や希望を率直に伝えることが大切
- 受託者になる人だけでなく、他の家族の理解を得るプロセスも重要
- 公正証書の作成、不動産の登記、信託口口座の開設など、複数の手続きが必要
- 信託開始後も、受託者による継続的な管理・記録が求められる
まとめ
- 家族信託は、相談→家族会議→契約設計→公正証書作成→財産移転・登記→信託開始という流れで進む
- 全体で1〜3ヶ月程度かかることが一般的
- 家族間の合意形成は、後々のトラブルを防ぐために欠かせないステップ
- 信託開始後も、受託者による継続的な管理が必要になる
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