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「親亡き後問題」とは?家族信託でできることを相談事例で解説

「親亡き後問題」とは?家族信託でできることを相談事例で解説

前回の記事では、知的障がいのある長女を持つご家庭の事例を取り上げました。今回は、より広い意味での「親亡き後問題」について、別の事例をもとに解説します。

「親亡き後問題」とは、親が高齢になり、自分が亡くなった後、一人で生活していくことが難しい子の将来をどう支えるか、という課題を指す言葉です。もともとは障がいのあるお子さんを持つご家庭で使われることが多かった言葉ですが、近年では、次のようなケースにも同じ悩みが広がっています。

  • 長期間ひきこもり状態にあり、就労経験がほとんどない成人の子
  • 精神的な不調があり、就労が安定しない子
  • 障害者手帳などの取得には至っていないが、金銭管理に不安がある子
  • 離婚や病気などの事情で、経済的に自立できていない子

いわゆる「8050問題」(80代の親が、50代のひきこもりの子を支え続ける状態)も、この親亡き後問題の一つの形です。

ご相談者:母親(78)

「息子(52歳)は、20年以上ほとんど自宅にいて、収入もありません。今は私の年金でなんとか二人で生活していますが、私が亡くなったら、息子はどうやって生活していくのか、夜も眠れないくらい心配しています。息子には障害者手帳などはなく、いわゆる『制度の対象』にはならないと聞いたことがあります。財産といっても、この持ち家と、多少の預貯金くらいしかありません。」

障害の有無にかかわらず、「自分が亡くなった後、この子は一人でやっていけるだろうか」という不安は、非常に切実なものです。

A. いいえ、障害者手帳の有無にかかわらず、家族信託は活用できます。

前回取り上げた「特定贈与信託」のような税制優遇制度は、障害者手帳をお持ちの方など、一定の要件を満たす場合に限られます。しかし、家族信託は、法律上そのような要件を求めていません。「お金の管理が苦手」「一人での生活に不安がある」という事情があれば、障害者手帳の有無にかかわらず、財産管理の仕組みとして活用することができます。

この事例のように、制度の対象外とされてしまうケースこそ、家族信託が力を発揮する場面といえます。

A. 財産面の備えは家族信託でできますが、生活全般を支えるには、他の準備もあわせて検討する必要があります。

家族信託は、あくまで「財産をどう管理し、どう使うか」を決める仕組みです。この事例で考えられる設計は、たとえば次のような形です。

  1. 母親を委託者、信頼できる親族(甥や姪など)を受託者として信託契約を結ぶ
  2. 「母親の死後は、息子を受益者として、生活費や家(持ち家)の維持費を渡す」という内容を定めておく(遺言代用信託)
  3. 受託者が、定期的に生活費を渡しながら、必要に応じて家の管理や固定資産税の支払いなども行う

これにより、母親が亡くなった後も、息子さんの生活費や住まいの維持にあてる財産管理は継続されます。ただし、日々の見守りや、社会とのつながりを保つための支援(福祉サービスの利用など)までは、信託の範囲ではカバーできません。地域の社会福祉協議会や、必要に応じて福祉の専門職(社会福祉士など)との連携もあわせて検討することが大切です。

A. 甥・姪など、少し広い範囲の親族に相談してみる、または専門家に相談し、可能な体制を一緒に考えることをおすすめします。

この事例のように、母親が高齢で、子が一人しかいない(その子自身が受益者になる)場合、受託者を誰に頼むかが大きな課題になります。兄弟姉妹がいなくても、甥・姪など、少し離れた親族に協力してもらえるケースもあります。

適任者がどうしても見つからない場合は、家族信託の設計自体が難しくなることもありますが、その場合でも、遺言や、後述する死後事務委任契約など、他の方法で備えられる部分もあります。まずは専門家に相談し、ご家庭の状況で実現可能な組み合わせを検討することをおすすめします。

A. 「死後事務委任契約」を活用すると、葬儀や各種の届出、家財の整理など、亡くなった直後に必要な事務を、あらかじめ頼んでおくことができます。

家族信託は、主に「亡くなった後の財産管理」を対象とする仕組みです。一方、葬儀の手配、行政への届出、公共料金の解約、家財の整理といった「亡くなった直後」に必要な事務は、家族信託の対象には含まれません。

このような事務についてもあらかじめ備えておきたい場合は、「死後事務委任契約」を別途結んでおくことで対応できます。息子さん自身が高齢の母親の死後、こうした手続きを一人で行うことが難しいと予想される場合、あらかじめ専門家や信頼できる第三者と死後事務委任契約を結んでおく、という備え方もあります。

  • 障害者手帳の有無にかかわらず、財産管理に不安があれば家族信託は活用できる
  • 家族信託は財産管理の仕組みであり、生活全般の見守りまではカバーできない
  • 受託者候補は、兄弟姉妹に限らず、甥・姪など少し広い範囲でも検討できる
  • 「亡くなった直後」の事務については、死後事務委任契約もあわせて検討する
  • 一つの制度で全てを解決しようとせず、複数の備えを組み合わせることが大切
  • 「親亡き後問題」は、障がいの有無にかかわらず、経済的に自立していない成人の子を持つ家庭に共通する課題
  • 家族信託は、障害者手帳などの要件を問わず活用でき、財産面での備えとして有効
  • 生活全般の見守りには、福祉サービスとの連携もあわせて必要
  • 受託者が見つからない場合も、親族の範囲を広げて検討したり、専門家に相談したりする余地がある
  • 死後事務委任契約と組み合わせることで、亡くなった直後の不安にも備えられる
3問クイズ

「親亡き後問題」と家族信託、あなたはどれくらい分かる?

記事の内容から3問出題します。全部解けるかチャレンジしてみましょう。

解説

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