相続登記は、必ず司法書士に依頼しなければならないわけではなく、相続人ご自身で申請することも法律上可能です。今回は、自分で相続登記をする場合のメリット・デメリットと、向いているケース・向いていないケースについて解説します。
結論:自分でできるが、ケースによって向き不向きがある
相続登記は、戸籍の収集から申請書の作成、法務局への提出まで、すべてご自身で行うことができます。実際に、費用を抑えるために自分で手続きをする方も一定数いらっしゃいます。
ただし、相続関係が複雑な場合や、時間的な余裕がない場合には、専門家に依頼したほうが結果的にスムーズなことも多いのが実情です。
自分で相続登記をするメリット
1. 司法書士への報酬がかからない
最も大きなメリットは、司法書士への依頼費用がかからないことです。かかる費用は、登録免許税と書類の取得実費のみになります。
2. 手続きの内容を自分で把握できる
すべて自分で行うため、どのような書類が必要で、どういう流れで進むのかを、実際の手続きを通じて理解できます。将来、別の不動産の相続が発生した際にも、経験が活きることがあります。
自分で相続登記をするデメリット
1. 戸籍の収集に時間と手間がかかる
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて集める必要があります。以前は、本籍地が転居のたびに変わっている場合、複数の市区町村役場に郵送で請求する必要があり、これだけで数週間かかることも珍しくありませんでした。
2024年3月1日からは、「広域交付制度」がスタートし、本人・配偶者・直系尊属(父母・祖父母など)・直系卑属(子・孫など)の戸籍であれば、本籍地以外の、最寄りの市区町村窓口でまとめて請求できるようになりました。これにより、以前よりは負担が軽くなっています。
ただし、広域交付制度には次のような制限があるため、注意が必要です。
- 窓口での本人請求に限られる:郵送請求や、代理人による請求(専門家による職務上請求を含む)はできません
- 兄弟姉妹など傍系親族の戸籍は対象外:取得できるのは、本人・配偶者・直系尊属・直系卑属の戸籍のみです
- 戸籍の附票は対象外:相続登記でよく必要になる戸籍の附票は、この制度の対象に含まれていません
- コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍は対象外:古い戸籍の中には、この制度で取得できないものもあります
つまり、広域交付制度を使えば以前より楽になった部分はあるものの、これだけですべての戸籍が揃うわけではなく、古い戸籍や附票などは、従来どおり本籍地の役所へ別途請求する必要があるケースも多いのが実情です。また、平日に窓口へ出向く時間が必要な点は変わりません。
2. 書類の不備で、法務局とのやり取りが発生しやすい
登記申請書や添付書類に不備があると、法務局から「補正」の連絡が入り、修正して再提出する必要があります。平日の日中に法務局とやり取りする時間が取りにくい会社員の方などは、この点で負担を感じやすい傾向があります。
3. 相続人が多い場合、遺産分割協議の調整が大変
相続人が複数いる場合、遺産分割協議書の作成や、全員からの実印・印鑑証明書の取り付けが必要になります。相続人同士の関係が疎遠だったり、意見がまとまりにくかったりする場合、この調整だけでもかなりの労力がかかります。
4. 平日に時間を取る必要がある
法務局の窓口は平日の日中しか空いていません(郵送申請やオンライン申請も可能ですが、それぞれ別の知識が必要です)。仕事をしながら手続きを進めるのは、思った以上に負担になることがあります。
自分で相続登記をするのが向いているケース
- 相続人が少ない(1〜2人程度)
- 相続する不動産が1件のみ
- 遺言書があり、遺産分割協議が不要
- 平日に役所や法務局へ行く時間の余裕がある
- 手続きに時間がかかっても構わない
専門家への依頼を検討したほうがよいケース
- 相続人が3人以上いる、または疎遠な親族が含まれる
- 複数の不動産を相続する
- 名義が祖父母の代のままなど、数次相続が発生している
- 平日に時間を取ることが難しい
- 早めに手続きを終わらせたい事情がある(売却予定があるなど)
一部だけ自分で行い、一部を依頼するという選択肢も
「戸籍の収集だけは自分でやってみて、書類作成や申請は司法書士に任せる」というように、手続きの一部だけを自分で行うことも可能です。すべてを依頼する場合に比べて、費用を抑えられる場合があります。ご自身の状況に応じて、専門家に相談しながら、どこまで自分で対応するかを決めるのも一つの方法です。
まとめ
- 相続登記は、法律上、相続人自身で申請することができる
- メリットは費用を抑えられること、デメリットは戸籍収集や書類作成の手間がかかること
- 相続人が少なく、不動産も1件程度であれば、自分での申請にチャレンジしやすい
- 相続人が多い、数次相続が発生しているといった場合は、専門家への依頼を検討する価値がある
相続登記を自分でする場合、あなたはどれくらい分かる?
記事の内容から3問出題します。全部解けるかチャレンジしてみましょう。


