前回の記事で、不動産登記簿の住所は住民票を異動しても自動的には変わらないこと、そして2026年4月からの義務化についてお伝えしました。今回は、実際にご自身で住所変更登記(登記名義人住所変更登記)や氏名変更登記を申請される方のために、申請書の作り方を解説します。
申請書全体の構成
住所・氏名変更登記の申請書は、次のような項目で構成されます。抵当権抹消登記などと比べると、記載する項目自体は少なくシンプルです。
- 登記の目的
- 原因
- 変更後の事項
- 申請人
- 添付情報
- 申請日・申請先法務局
- 登録免許税
- 不動産の表示
1. 登記の目的
何が変わったかに応じて、次のように記載します。
- 住所だけが変わった場合:「〇番所有権登記名義人住所変更」
- 氏名だけが変わった場合(結婚・離婚などによる姓の変更):「〇番所有権登記名義人氏名変更」
- 住所・氏名の両方が変わった場合:「〇番所有権登記名義人住所、氏名変更」
「〇番」の部分には、登記事項証明書の甲区(所有権に関する事項が記載されている欄)に記載されている、変更対象となる所有者の順位番号を記載します。
注意したいのは、過去にすでに住所変更の登記がされている場合です。この場合、登記簿上では「付記1号」といった形で記録されていますが、申請書には「付記1号」とは書かず、その元になっている番号(たとえば「2番」)のみを記載します。
共有名義の不動産で、共有者のうち一部の方だけに変更があった場合も、基本的な書き方は同じです。
2. 原因
変更の理由と、その日付を記載します。理由によって書き方が異なります。
- 引っ越しによる住所変更:「令和〇年〇月〇日住所移転」
- 結婚による氏名変更:「令和〇年〇月〇日氏名変更」(婚姻届が受理された日)
- 離婚による氏名変更:「令和〇年〇月〇日氏名変更」(離婚届が受理された日)
- 住所・氏名の両方が変わった場合:「令和〇年〇月〇日住所移転、令和〇年〇月〇日氏名変更」のように、それぞれの日付を記載
日付は、住民票の写しや戸籍謄本に記載されている異動日を確認して記載します。
なお、住居表示の実施(住居表示に関する法律に基づく行政上の住所表示の変更)や、市区町村合併などによる町名・地番の変更が原因の場合は、原因の書き方が異なるだけでなく、登録免許税が非課税になる扱いがあります(後述)。
3. 変更後の事項
変更後の、現在の住所または氏名を記載します。
変更後の事項 住所 〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
住所・氏名の両方が変わった場合は、両方を記載します。共有者のうち特定の方だけが変わった場合は、「共有者 山田太郎の住所」のように、対象者を明記します。
記載する住所・氏名は、住民票や戸籍の記載どおりに、省略せず正確に転記してください。
4. 申請人
変更登記の対象となる、不動産の所有者(共有名義の場合は変更のあった共有者)本人の住所・氏名を記載します。
住所・氏名変更登記は、抵当権抹消登記などと異なり、相手方(義務者)がいない単独申請です。所有者本人が単独で申請できる点が特徴です。
申請人(所有者) 〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
山田 太郎
共有名義で複数の共有者に変更がある場合は、それぞれの住所・氏名を記載します。
5. 添付情報
一般的なケースでは、次の項目を記載します。
添付情報
登記原因証明情報
- 登記原因証明情報:住所変更の場合は住民票の写し、氏名変更の場合は戸籍謄本(抄本)など、変更の事実と日付を証明する書類です
- 代理人(司法書士など)に依頼して申請する場合は、これに加えて「代理権限証明情報」(委任状)が必要です。ご自身で申請する場合は不要です
登記簿上の住所・氏名から現在の住所・氏名までの経過(つながり)が、1通の書類だけで確認できない場合は、複数の書類(戸籍の附票、戸籍謄本、住民票の除票など)をあわせて添付する必要があります。
6. 申請日・申請先法務局
申請する日付と、不動産の所在地を管轄する法務局名を記載します。
令和〇年〇月〇日申請 〇〇法務局〇〇支局(出張所)
7. 登録免許税
住所・氏名変更登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。土地と建物はそれぞれ別の不動産として数えます。マンション(敷地権付き区分建物)の場合は、建物本体に加えて、敷地権の目的となっている土地の数だけ加算されます(たとえば敷地権が2つある場合、建物1個+敷地権2個で合計3,000円)。
住所と氏名の両方を1回の申請でまとめて変更する場合でも、金額は不動産1個につき1,000円のままです。住所変更と氏名変更を別々の申請書で申請すると、それぞれに登録免許税がかかってしまうため、両方の変更がある場合は、まとめて1回で申請するほうが費用を抑えられます。
なお、住居表示の実施や町名地番変更が原因の場合は、登録免許税が非課税となります。その場合は、次のように記載します。
登録免許税 登録免許税法第5条第4号により非課税(住居表示実施の場合)
登録免許税 登録免許税法第5条第5号により非課税(町名地番変更の場合)
8. 不動産の表示
登記事項証明書に記載されている内容と完全に一致させる形で記載します。
- 土地の場合:所在、地番、地目、地積
- 建物の場合:所在、家屋番号、種類、構造、床面積
不動産番号が分かっている場合は、それを記載することで、他の項目を省略できる扱いになっています(実務上は、念のため他の項目もあわせて記載しておくと安心です)。
記載例(戸建てで住所のみ変更したケース)
登記申請書
登記の目的 2番所有権登記名義人住所変更
原 因 令和〇年〇月〇日住所移転
変更後の事項 住所 〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
申 請 人 〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
山田 太郎
添付情報 登記原因証明情報
令和〇年〇月〇日申請 〇〇法務局〇〇支局
登録免許税 金2,000円(土地・建物それぞれ1,000円)
不動産の表示
所 在 〇〇市〇〇町〇丁目
地 番 〇番〇
地 目 宅地
地 積 〇〇.〇〇平方メートル
所 在 〇〇市〇〇町〇丁目〇番地〇
家屋番号 〇番〇
種 類 居宅
構 造 木造かわらぶき2階建
床面積 1階〇〇.〇〇平方メートル 2階〇〇.〇〇平方メートル
※実際の申請書は、法務局の様式や記載要領に沿って作成する必要があります。上記はあくまで一例です。
自分で申請する際に気をつけたいポイント
- 登記事項証明書を事前に取得し、現在の登記簿上の住所・氏名と、変更対象となる所有権の順位番号(甲区の「〇番」)を正確に確認する
- 過去に住所変更登記が入っている場合、「付記1号」ではなく、その元になる順位番号を記載する
- 登記簿上の住所から現在の住所までのつながりが、住民票の写し1通で確認できるか事前にチェックする(できない場合は戸籍の附票などの追加取得が必要)
- 住所・氏名の両方に変更がある場合は、まとめて1回の申請にすることで登録免許税を抑えられる
- 共有名義の場合、変更のあった共有者ごとに記載が必要になる
あわせて検討したい「検索用情報の申出」
前回の記事でもお伝えしたとおり、2026年4月からは、あらかじめ「検索用情報」を法務局に申し出ておくことで、次回以降の住所変更は登記官が職権で行ってくれる制度(スマート変更登記)が始まります。今回、ご自身で住所変更登記を申請される際に、あわせて検索用情報の申出もしておけば、将来また引っ越しをした際に、同じ手続きを繰り返す必要がなくなります。
まとめ
- 住所・氏名変更登記は、抵当権抹消登記などと異なり、所有者本人が単独で申請できる
- 登録免許税は不動産1個につき1,000円で、住所・氏名の変更をまとめて申請すると費用を抑えられる
- 住居表示の実施や町名地番変更が原因の場合は非課税になる
- 登記簿上の住所とのつながりが1通の書類で証明できるか、事前の確認が大切
申請書の記載自体はシンプルですが、住所のつながりが証明できずに書類集めに手間取るケースは実務でもよく見られます。ご自身での手続きに不安がある場合や、内容を確認してほしい場合は、司法書士にご相談ください。
住所・氏名変更登記、あなたはどれくらい分かる?
記事の内容から3問出題します。全部解けるかチャレンジしてみましょう。


