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住所変更登記を忘れると売却時に困る理由

住所変更登記を忘れると売却時に困る理由

引っ越しをした際、住民票の異動は済ませていても、不動産の登記簿上の住所変更まで手続きしている方は、実はそれほど多くありません。「住民票が変わっていれば、登記簿の住所も自動的に変わるはず」と思われがちですが、これは誤解です。

今回は、この「住所変更登記」を忘れたままにしておくと、将来どのような場面で困るのか、具体的に解説します。

住所変更登記とは

不動産の登記簿には、所有者の氏名だけでなく、住所も記載されています。この住所は、登記した時点のものがそのまま残り続け、住民票を異動しても自動的には更新されません。

引っ越しや本店移転などで登記簿上の住所と現在の住所が異なる場合、これを一致させるために行うのが「住所変更登記(登記名義人住所変更登記)」です。

なぜ売却時に困るのか

不動産を売却する際、法務局に対して「所有権移転登記」を申請しますが、この申請では、登記簿上の所有者と、実際に売却しようとしている人物が同一人物であることを証明する必要があります。

住民票の住所と登記簿の住所が一致していれば問題ありませんが、引っ越しなどで住所が変わっている場合、登記簿上の「〇〇市〇〇町の山田太郎さん」と、今回売却しようとしている「現住所〇〇市△△町の山田太郎さん」が同一人物であることを、別途証明しなければなりません。

この証明のために必要になるのが、住所のつながりを示す住民票の除票や戸籍の附票といった書類であり、多くの場合、売却の決済に先立って住所変更登記そのものを済ませておく必要があります。

具体的に、どんな場面で困るのか

1. 決済直前になって、追加の書類集めに追われる

不動産の売買では、決済日(引き渡し・代金受領の日)があらかじめ決まっていることがほとんどです。住所のつながりが確認できないまま決済日が近づくと、慌てて住民票の除票や戸籍の附票を取得することになります。

引っ越しの回数が多い方の場合、住所のつながりを一本の書類だけで証明できないことがあり、複数の役所から書類を集める必要が生じることもあります。

2. 住民票の除票・戸籍の附票が取得できないことがある

住民票の除票や戸籍の附票には、保存期間があります。以前は5年間とされていましたが、法改正により保存期間が延長され、現在は150年間保存されることになっています。ただし、これは制度改正後の運用であり、改正前に保存期間が経過して廃棄されてしまった古い記録については、証明書自体が取得できないことがあります

住所の変更が古く、間に何度も転居を重ねている場合、住所のつながりを書類だけで証明できないケースが実際にあります。この場合、上申書(所有者本人に相違ない旨を説明する書面)や、他の方法での代替証明が必要になることがあり、手続きがより煩雑になります。

3. 決済のスケジュールに影響が出ることがある

不動産売買では、買主側の住宅ローン実行日と決済日が連動していることが多く、決済日を動かすことが難しいケースが少なくありません。住所変更登記や必要書類の準備が間に合わないと、決済そのものを延期せざるを得なくなり、買主・仲介業者を含めた関係者全体に影響が及ぶ可能性があります。

住所変更登記は義務化されている

相続登記の義務化とあわせて、住所変更登記についても法律上の申請義務が設けられています。住所等を変更した日から2年以内に登記の申請をしないと、正当な理由がない限り、5万円以下の過料の対象となる可能性があります(この義務は2026年4月1日から施行されます)。

「売却するときにまとめてやればいい」という考え方は、義務化の観点からも見直す必要があります。

「検索用情報の申出」をしておけば、住所変更登記が不要になることも

義務化とあわせて、所有者の負担を軽くするための新しい制度も始まります。「検索用情報の申出」という手続きです。

令和8年(2026年)4月1日から、法務局の登記官が住基ネット(住民基本台帳ネットワーク)の情報を検索し、所有者の住所変更を検知して、職権(所有者からの申請なしに)で住所変更登記を行う「スマート変更登記」という仕組みが始まります。

この仕組みを利用するには、あらかじめ登記官が住基ネットを検索できるよう、所有者側から氏名・住所に加え、氏名の振り仮名、生年月日、メールアドレスといった「検索用情報」を法務局に申し出ておく必要があります。この申出は、次の2つの方法で行うことができます。

  • 登記申請と同時に行う方法:令和7年4月21日以降、不動産の所有権保存・移転登記などを申請する際に、あわせて検索用情報を申請書に記載して申し出る方法(この場合、追加の書類は基本的に不要です)
  • 既存の所有者が個別に行う方法:すでに所有者として登記されている方が、登記申請とは別に、単独で検索用情報を申し出る方法(押印や電子署名は不要で、身分証明書の写し程度で手続きでき、費用もかかりません)

検索用情報の申出を済ませておけば、実際に引っ越しをした際、ご自身で住所変更登記を申請しなくても、登記官が住基ネットの情報をもとに職権で登記をしてくれるため、義務違反(過料の対象)に問われることもなくなります

ただし、この職権登記は、申出をした不動産のみが対象になります。複数の不動産をお持ちの場合は、それぞれについて申出をしておく必要があります。また、登記簿上の住所・氏名と現在の住民票の記載につながりが確認できない場合(平成22年10月5日より前の変更など)は、戸籍の附票などの追加書類が必要になることもあります。

すでに不動産をお持ちの方は、このタイミングで検索用情報の申出をしておくと、今後の住所変更のたびに登記申請をする手間そのものがなくなります。

住所変更登記の手続き自体は、それほど複雑ではない

住所変更登記自体は、相続登記などと比べると必要書類も少なく、比較的シンプルな手続きです。

  • 登記簿上の住所から現在の住所までのつながりが分かる住民票(または戸籍の附票)
  • 登記申請書

を用意し、法務局に申請するのが基本的な流れです。転居の回数が少ないうちに済ませておけば、書類集めもスムーズに進みます。

まとめ

  • 住民票を異動しても、不動産登記簿の住所は自動的には変わらない
  • 売却時には、登記簿上の所有者と現在の所有者が同一人物であることの証明が必要になる
  • 転居を繰り返していると、住所のつながりを証明する書類が揃わないことがある
  • 住所変更登記は法律上の義務化の対象でもあり、放置には過料のリスクがある
  • 「検索用情報の申出」をしておけば、登記官が職権で住所変更登記をしてくれる制度も2026年4月から始まる

「そのうち売るかもしれない」という不動産をお持ちの方は、住所変更のタイミングであわせて登記も済ませておくことをおすすめします。

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