前回の記事で、住宅ローン完済後は抵当権抹消登記が必要だとお伝えしました。今回は、実際にご自身で手続きをされる方のために、申請書の基本的な作り方を解説します。
申請書全体の構成
抵当権抹消登記の申請書は、法務局の様式にならって、次のような項目を順に記載していきます。
- 登記の目的
- 原因
- 権利者
- 義務者
- 添付情報
- 登記識別情報を提供できない理由(該当する場合)
- 申請日・申請先法務局
- 登録免許税
- 不動産の表示
以下、それぞれの書き方を見ていきます。
1. 登記の目的
「〇番抵当権抹消」と記載します。〇番の部分には、登記簿(登記事項証明書)の「権利部(乙区)」に記載されている抵当権の順位番号を入れます。
たとえば、乙区に記載された抵当権が「順位番号1番」であれば、次のように書きます。
登記の目的 1番抵当権抹消
同じ不動産に複数の抵当権が設定されており、そのすべてを抹消する場合は、「1番、2番抵当権抹消」のように順位番号を併記します。
なお、複数の不動産をまとめて1つの申請書で申請する場合で、それぞれの不動産における抵当権の順位番号が異なっているときは、次のように記載する方法もあります。
登記の目的 抵当権抹消(順位番号後記のとおり)
この場合、各不動産の順位番号は、後述する「不動産の表示」の欄で、それぞれの不動産ごとに「(順位番号1番)」のように個別に記載します。土地は1番、建物は2番というように、不動産ごとに抵当権の順位番号が異なるケースでよく使われる書き方です。
2. 原因
抵当権が消滅した理由と、その日付を記載します。住宅ローン完済のケースでは、通常は次のように記載します。
原因 令和〇年〇月〇日弁済
日付は、金融機関から送付される抵当権解除証書(または弁済証書)に記載されている日付を使用します。金融機関によっては「解除」「放棄」など、弁済以外の原因が記載されている場合もあるため、送られてきた書類の記載に従ってください。
3. 権利者
抵当権が抹消されることで利益を受ける人、つまり不動産の所有者を記載します。
権利者 (住所)
(氏名)
所有者が複数いる共有名義の場合は、全員の住所・氏名を記載します。
4. 義務者
抵当権を持っていた側、つまり金融機関を記載します。
義務者 (本店所在地)
(金融機関名)
(代表者の資格・氏名)
金融機関から送られてきた委任状に記載されている名称・所在地・代表者名をそのまま転記します。合併等で金融機関名が変わっている場合は、現在の正式名称を確認してから記載します。
5. 添付情報
申請にあたって添付する書類の名称を記載します。一般的なケースでは、次のような項目が並びます。
添付情報
登記識別情報(または登記済証)
登記原因証明情報
代理権限証明情報
- 登記識別情報(または登記済証):金融機関から交付されたもの
- 登記原因証明情報:抵当権解除証書や弁済証書など、抹消の原因を証明する書類
- 代理権限証明情報:金融機関からの委任状(所有者自身が申請する場合でも、金融機関側の代理人として司法書士等に依頼する場合や、委任状に基づいて申請する場合に必要です)
6. 登記識別情報を提供できない理由
登記済証(古い権利証)や登記識別情報を紛失している、または提供できない事情がある場合は、その旨と理由を記載する欄を設けます。該当しない場合はこの項目自体を省略してかまいません。紛失している場合は、別途「事前通知」や「本人確認情報」の制度を利用する必要があり、手続きがやや複雑になります。
7. 申請日・申請先法務局
申請する日付と、不動産の所在地を管轄する法務局名を記載します。
令和〇年〇月〇日申請 〇〇法務局(または地方法務局)〇〇支局(出張所)
管轄の法務局が分からない場合は、法務局のウェブサイトで「管轄のご案内」を確認できます。
8. 登録免許税
抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です(土地と建物はそれぞれ別の不動産として数えます。マンションの場合は、敷地権の目的である土地の個数によって加算されることがあります)。
なお、1つの申請書で申請できる不動産は最大20個までとされており、それを超える場合の税額には上限(20,000円)が設けられています。
登録免許税 金〇,000円
収入印紙で納付するのが一般的で、申請書に貼付するか、別紙(登録免許税納付用台紙)に貼って提出します。
9. 不動産の表示
登記事項証明書に記載されている内容と完全に一致させる形で、対象不動産の情報を記載します。
- 土地の場合:所在、地番、地目、地積
- 建物の場合:所在、家屋番号、種類、構造、床面積
住所(住居表示)と登記簿上の地番・家屋番号は異なることが多いため、必ず登記事項証明書を取得して、その記載どおりに転記してください。
なお、登記の目的欄で「抵当権抹消(順位番号後記のとおり)」と記載した場合は、各不動産の表示のあとに、それぞれ該当する順位番号を「(順位番号1番)」のように付記します。土地と建物とで抵当権の順位番号が異なる場合などに、この方式を使うと分かりやすくなります。
記載例(戸建てのケース・簡略版)
登記申請書
登記の目的 1番抵当権抹消
原 因 令和〇年〇月〇日弁済
権 利 者 〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
山田 太郎
義 務 者 〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
株式会社〇〇銀行
代表取締役 〇〇 〇〇
添付情報 登記識別情報 登記原因証明情報 代理権限証明情報
令和〇年〇月〇日申請 〇〇法務局〇〇支局
登録免許税 金2,000円(土地・建物それぞれ1,000円)
不動産の表示
所 在 〇〇市〇〇町〇丁目
地 番 〇番〇
地 目 宅地
地 積 〇〇.〇〇平方メートル
所 在 〇〇市〇〇町〇丁目〇番地〇
家屋番号 〇番〇
種 類 居宅
構 造 木造かわらぶき2階建
床面積 1階〇〇.〇〇平方メートル 2階〇〇.〇〇平方メートル
※実際の申請書は、法務局の様式や記載要領に沿って作成する必要があります。上記はあくまで一例です。
自分で申請する際に気をつけたいポイント
- 登記事項証明書は必ず事前に取得し、不動産の表示や抵当権の順位番号を正確に確認する
- 金融機関から届いた書類一式(登記識別情報、解除証書、委任状など)は、開封時から一通も欠けないよう保管する
- 記載内容に誤りがあると、法務局から補正の連絡が入り、手続きが長引くことがある
- 登記識別情報や登記済証を紛失している場合は、通常よりも手続きが複雑になるため、早めに専門家へ相談する
まとめ
抵当権抹消登記の申請書は、項目自体はそれほど多くありませんが、登記簿の記載と一言一句正確に一致させる必要があり、慣れていないと戸惑う部分も多いのが実情です。特に不動産の表示や順位番号の記載を誤ると、法務局とのやり取りに時間がかかってしまいます。


